『ベトナムから遠く離れて』
LOIN DU VIETNAM
67〜68年頃にピークを迎えるこのヴェトナム戦争は、TVで伝えられた初めての戦争だったこともあって、世界中に反戦運動の嵐を巻き起こし、それは当時の反体制運動の主要な流れのひとつとして大きな盛り上がりを見せた。68年には、ケネディから戦争を引き継いだジョンソンがついに大統領選挙への出馬を断念したほどである(もちろん同年のいわゆる「テト攻勢」で敗北を喫したことが決定的なきっかけだが)。とくに、この戦争で映像メディアが大きな役割を果たしていることを意識した映画作家たちが、映画という自分たちの表現手段を使ってアメリカ帝国主義への批判とヴェトナム人民との連帯を表明しようとしたことは、歴史上、また映画史上、きわめて重要な出来事と言えるだろう。
その成果こそ、「ベトナムから遠く離れて」(67年)にほかならない。クリス・マルケルの呼びかけに応え、(映画のクレジット順で)アラン・レネ、ウィリアム・クライン、ヨリス・イヴェンス、アニェス・ヴァルダ、クロード・ルルーシュ、ジャン=リュック・ゴダールがフィルムを持ち寄り、マルケルの総編集のもとに出来上がったこの映画は、視点や語り口においてきわめて不均質でありながら、いや、それゆえにこそ、ヴェトナム戦争という大きな出来事が映画界に与えたインパクトの広がりと深みを如実に示している。そのなかでも、われわれはとくにイヴェンスとゴダールの二人に注目したい。結論的に言うなら、旧左翼的で直接的なイヴェンスと、新左翼的で媒介的なゴダール、その両極端の出会い(損ね)の場となっているところに、「ベトナムから遠く離れて」のひとつの面白さがあるのではなかろうか。
監督
アラン・レネ(「クロード・リダー」篇監督)
ウィリアム・クライン(監督)
ヨリス・イヴェンス(監督)*協力
アニェス・ヴァルダ(監督)*協力
クロード・ルルーシュ(監督)
ジャン=リュック・ゴダール (「カメラ・アイ」篇監督)
編集
クリス・マルケル
協力
クリス・マルケル/ミシェル・レイ/ロジェ・ピック/マルセーヌ・ロリダン/フランソワ・マスペロ/ジャック・ステルンベルグ/ジャン・ラクーテュール
音楽
ミシェル・ファノ/ミシェル・シャプデナ/ジョルジュ・アペルギス/ ナレーター=モーリス・ガレル/ベルナール・フレッソン/カレン・ビアゲルノン
1967年/フランス/116分/カラー・モノクロ/35ミリ/スタンダード/日本語字幕:寺尾次郎 |