LINE UP 2001

MESSAGE INTERVIEW
INTRODUCTION STORY STAFF & CAST
PRODUCTION NOTE グレイズアナトミー INFORMATION LINK





INTRODUCTION

「この映画は金のために作ったのではありません。意味がわからなかったら何度でも観てください」スクリーンの前で監督自ら挨拶するが、客席には誰もいない。『スキ ゾポリス』のオープニングは当時のソダーバーグの境遇を見事に象徴している。

ソダーバーグは26歳のデビュー作『セックスと嘘とビデオテープ』('89)でいきなり カンヌ映画祭パルムドールをさらって騒がれたが、その後鳴かず飛ばず。95年、ハリ ウッドから完全に見捨てられた彼が、親友5人と資金を集めて作ったのが、この『ス キゾポリス』だ。

スタッフはその5人のみで、節約のために彼らは俳優も兼任した。 ソダーバーグは自ら撮影と主演に挑戦。主役の妻と子供役は逃げたソダーバーグの女 房と娘が演じた。このミニマムなプロダクションのおかげでエンディングのスタッフ とキャストのクレジットはたった1コマに収まってしまう。

内容は「ルイス・ブニュエルとリチャード・レスターとモンティ・パイソンの影響 を反映させた」と本人が言っているとおり、ブニュエルの『欲望のあいまいな対 象』('77)の二人一役を思わせるソダーバーグ夫妻の一人二役の不倫劇を軸に、『自由 の幻想』(74)の写真ギャグの引用、レスターがビートルズ映画で多用したコマ落とし、モンティ・パイソン風不条理コントなどが散りばめられる。また、セットのバラ シや批評家の解説などの脱構築ギャグはゴダール的だ(ソダーバーグはオフィスに『カラビニエ』のポスターを貼っている)。

しかし「わけがわからない」と、アメリ カ本国での公開は興行的に惨敗。空っぽの客席は現実となった。その年、アカデミー 賞のパーティに行ったソダーバーグは「お前なんか知らん」と門前払いを食らった。

だが、製作規模も手法もまるで学生の実験映画のようなこの『スキゾポリス』でゼ ロから再出発したソダーバーグは、商業性と前衛性の両立を模索しながら、4年後に は『トラフィック』でアカデミー監督賞を受賞してしまった。監督自ら撮影した『トラフィック』の手ブレ、ピンボケ、ジャンプカットだらけの映像の原点はこの『ス キゾポリス』だったのである。

ちなみに、その前年のオスカー受賞作『アメリカン・ビューティ』のケヴィン・スペイシーも『スキゾポリス』のソダーバーグが原点か?

町山 智浩(映画評論家)
 








STORY

フレッチャー・マンソン(スティーヴン・ソダーバーグ)は、アジマス・シュイターズ(マイク・マローンという“イベンチャリズムの思想家”が主宰する団体に勤めている。妻(ベッツィ・ブラントリー)と娘のいる家庭に戻れば、「ハニー、ただいま」というテレビのホームドラマそのままの顔を見せるよきパパだ。

たまたま同僚が心臓発作で亡くなったため、シュイターズの演説原稿を書く仕事が回ってきた。おりしも別 の同“名無し男”(エディー・ジェミソン)は、社内にスパイがいると大騒ぎ。実はマンソンこそ「スパイになれ」と勧誘されているターゲットの人物だった。

一方、害虫駆除と割礼が本業で、“挿入”も“種付け”もやるエルモ・オキシジャン(デビッド・ジェンセン)という男がいた。彼は“名無し男”の家を訪ね“名無し男”の妻ダイアン(キャサリーン・ラ・ナサ)と関係すると、心臓発作で亡くなった同僚の妻宅にも向かった。そしてそのエルモの仕事を見つめる、謎のカップル(サイラス・クーパーとリアン・パティソン)がいた。

マンソンはある日、自分とそっくりな男と出会う。それは歯科医師のコーチェク(ソダーバーグの二役)だった。そしてコーチェクが電話で呼び出した女は、なんとマンソンの妻。そして彼女はコーチェクの妻と瓜二つだったのだ。コーチェクはマンソンの妻と意気投合し、仕事人間マンソンと別 れるよう勧める。だがマンソンの妻が離別を決意したとき、コーチェクは“魅力的女性第2号”(ブラントリーの二役)と出会っており、マンソンの妻は「このうじ虫!」とコーチェクをののしって家を去る。

一方、エルモは謎のカップルからの、より良いオファーを受け、ますます過激な行動を展開する。だがエルモの行動が、とんでもない結末を呼ぶとは、まだ誰も気づいていなかった。

そして傷心のマンソンの妻を優しく迎えたのは、マンソンとコーチェクにそっくりな、フランス語をあやつる男(またしてもソダーバーグ)だった。だがマンソンが演説原稿を書き終えたとき、妻は夫との関係が修復されたことを知る。2人はシュイターズの演説会に出かけるが、そこにエルモが登場、なんとシュイターズを狙撃したのである…。
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STAFF & CAST

STAFF
監 督   スティーヴン・ソダーバーグ
脚 本 スティーヴン・ソダーバーグ
製 作 ジョン・ハーディ
製作総指揮 ジョン・リー
撮 影 スティ−ヴン・ソダーバーグ
編 集 サラ・フラック
キャスティング デビッド・ジェンセン

 
CAST
フレッチャー・マンソン   スティーヴン・ソダーバーグ
歯科医 コーチェク スティーヴン・ソダーバーグ
マンソンの妻 ベッツィ・ブラントリー
魅力的女性第2号 ベッツィ・ブラントリー
エルモ・オキシジャン デビッド・ジェンセン
T.アジマス・シュイターズ マイク・マローン
名無し男 エディー・ジェミソン
右腕の男 スコット・アレン
ダイアン キャサリーン・ラ・ナサ
謎のカップル(男) サイラス・クーパー
謎のカップル(女) リアン・パティソン
インタビューを受けている男 C・C・コートニ―

スティーヴン・ソダーバーグ
(フレッチャー・マンソン&歯科医コーチェク
/監 督・脚本・撮影)

Steven Soderbergh

1963年1月14日、6人兄弟の2番目としてジョージア州アトランタに生まれる。幼いころ父親の仕事の関係で、ルイジアナ州バトンルージュに引っ越した。

15歳にして大学のアニメーションクラスに加わり、中古機材を購入して16ミリ映画を作り始める。高校卒業後はハリウッドへ行き、フリーの編集者として働いた。その後故郷へ戻り、短編映画を作り脚本を書いていた。ソダーバーグが初めて認められたのは'86年、ロックグループ、イエスのコンサート・ビデオで、これはグラミー賞にノミネートされた。そして89年『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞し、アカデミー賞のオリジナル脚本賞にノミネートされた。

その華々しいデビューにもかかわらず、ソダーバーグは自らのスタンスを変えない。 『KAFKA/迷宮の悪夢』『わが街セントルイス』『蒼い記憶』と、“作りたい映画”を作りつづけた。そして最もソダーバーグらしい『グレイズ・アナトミー』『スキゾポリス』の2本を経て、ジョージ・クルーニー主演の『アウト・オブ・サイト』で再び商業監督としての手腕を披露する。

こうして2001年のアカデミー賞では『エリン・ブロコビッチ』と『トラフィック』の2本で監督賞にノミネートされるという、38年のマイケル・カーティス以来の栄誉に輝き、みごと『トラフィック』で監督賞を獲得した。

公開待機作はシナトラ一家の『オーシャンと11人の仲間』をリメイクした『オーシャンズ11』。2001年11月からは『セックスと嘘とビデオテープ』の続編『How To Survive A Hotel Room Fire』の撮影に入る予定だ。

FILMOGRAPHY
  セックスと嘘とビデオテープ(1989)
KAFKA/迷宮の悪夢(1991)
わが街 セントルイス(1993)
蒼い記憶(1995)
グレイズ・アナトミー(1996)
スキゾポリス(1996)
アウト・オブ・サイト(1998)
イギリスから来た男(1999)
エリン・ブロコビッチ(2000)
トラフィック(2000)
オーシャンズ11(2001)

 
ベッツィ・ブラントリー
(フレッチャー・マンソン夫人 & “魅力的女性第2号”)
Betsy Brantley

1955年9月20日、ノースカロライナ州ルサフォードトンに生まれる。元ソダーバーグ夫人だったが、94年に離婚した。今回は別 れた夫の妻を演じ、同時にその夫が心奪われる女性の二役を演じている。この『スキゾポリス』がソダーバーグの自伝的作品と言われる所以でもある。

82年、ショーン・コネリーと共演した『氷壁の女』で主役を演じて注目を集め、以後『アナザー・カントリー』、『第四の核』などに出演した。また『ロジャー・ラビット』、『ハバナ』など大作に数多く出演している。

他に『ディープ・インパクト』、『マネー・トレーダー/銀行崩壊』、アシュレイ・ジャッドを有罪にする『ダブル・ジョパディー』の検事役、『マーキュリー・ライジング』で主人公の少年を最後に引き取る施設の教師役などがある。テレビ番組では『シカゴ・ホープ』など、ゲスト出演作は数多い。

 
デビッド・ジェンセン (エルモ・オキシジャン)
David Jensen

害虫駆除と割礼を本業としながら、割礼から挿入そして種付けまでやってしまうというエルモを演じている。もともとは『セックスと嘘とビデオテープ』で小道具係を務めていた。この『スキゾポリス』の中で、「友達だから出演しただけ」というのは本当のようである。

その他のソダーバーグ作品では『KAFKA/迷宮の悪夢』に“笑う男”役で出演したほか、『わが街 セントルイス』『蒼い記憶』『トラフィック』などに出演している。最新作の『Ocean's Eleven』にも登場するというから楽しみだ。また『アウト・オブ・サイト』では大道具、『蒼い記憶』では音響アシスタントを、この『スキゾポリス』ではキャスティング・ディレクターを務めている。

 
マイク・マローン(T・アジマス・シュイターズ)
Mike Malone

思想家のようで宗教家とも思えるシュイターズを演じている。もともとは美術関係の仕事をしている人で、ソダーバーグ作品では『蒼い記憶』のセット制作を担当した。この時はマイク・シェルフ・マローンとクレジットされている。

その他作品には『キリング・ゾーイ』『トレマーズ2』『アウト・オブ・サイト』『オースティン・パワーズ・デラックス』、そして『エリン・ブロコビッチ』がある。出演作としてはデビッド・リンチの『ツィン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間』でFBIエージェントを演じたほか、『アウト・オブ・サイト』『エリン・ブロコビッチ』『トラフィック』に出演。

 
エディー・ジェミソン (“名無し男”)
Eddie Jemison

シュイターズの事務所に勤めながら、「ここにはスパイがいる」と騒ぎ立て、ついにはクビになる“名無し男”。太った女性が好きで、エルモならずとも魅力を感じる美人妻を、“やせすぎ”と評する。

90年代半ばに、バドワイザーのCMに主演したことで有名。この『スキゾポリス』が映画デビューのようだが、同じ頃テレビ出演の経験がある。他の出演作品にはペネロープ・アン・ミラー主演の『レリック』があり、博物館員を演じていた。待機中の作品にはソダーバーグの『オーシャンズ11』がある。


 
スコット・アレン (“右腕の男”)
Scott Allen

フレッチャー・マンソンの上司で、彼にシュイターズの演説原稿を書かせる“右腕の男”を演じている。映画デビュー作は、人間とミュータントの戦いを描いた90年の近未来SFホラー『最終生物バイオゾイド』。そして『スキゾポリス』のあと、ソダーバーグの『アウト・オブ・サイト』と『エリン・ブロコビッチ』に出演している。


 
キャサリーン・ラ・ナサ (ダイアン)
Katherine La Nasa
害虫駆除にきたエルモを誘惑する人妻ダイアン。夫の“名無し男”は太目の女性が好きなため、いつも「食え、食え」と言われている。コーチェク医師の患者でもあり、“魅力的女性第2号”にコーチェクを紹介する。

1967年生まれ。バレエ・ダンサーから女優に転じた。89年『ハートに火をつけて』でデニス・ホッパーと知り合い、結婚。92年に離婚した。そのほかの出演作には『フラッシュ・ファイヤー』などがあるが、主にテレビで活躍している。


 
ジョン・ハーディ(製作/テレビの司会者)
John Hardy

この映画を製作し、テレビの司会者役をも演じた。反シュイターズである消費者擁護派の論客を迎えるトーク・ショーの司会者である。79年から製作を手がけ、『セックスと嘘とビデオテープ』でプロダクション・マネージャーを担当して、ソダーバーグとのコンビが始まった。

以後『わが街セントルイス』『蒼い記憶』『グレイズ・アナトミー』『スキゾポリス』『アウト・オブ・サイト』『イギリスから来た男』『エリン・ブロコビッチ』『オーシャンズ11』と、ソダーバーグのほとんどの作品で製作を担当している。


 
ジョン・リー(製作総指揮)
John Re

この映画の製作総指揮を担当。ソダーバーグ作品では『グレイズ・アナトミー』の製作総指揮も担当している。その他の作品としては、アードマン・スタジオの『ウォレスとグルミット』、アリッサ・ミラノとショーン・ペンが共演した『ヒューゴ・プール』がある。
   


INTERVIEW

ソダーバーグへのインタビューはこちらから




この『スキゾポリス』は、カンヌ映画祭で初めて上映された。それも真夜中に始まる“サプライズ・スクリーニング”である。タイトルも監督名も明らかにしないまま上映が始まったが、『コヤニスカッティ』もどきに景色が高速で流れたかと思うと、テレビのインタビューが始まったりする。あるいは突然、それまで英語をしゃべっていた主人公が日本語で「今、帰ったよ」と話し始める。妻の方は相変わらず英語で応対するわけだ。このあと同じような調子で、イタリア語やフランス語のシークェンスが続く。会場の各国のジャーナリストからは、やんやの喝采が起こった。

これはソダーバーグを『セックスと嘘とビデオテープ』以来応援している、カンヌ映画祭のボス、ジル・ジャコブの提案で行われたもの。ソダーバーグはこの映画で“映画言語の可能性”をとことん探ってみたのである。

ソダーバーグが演じるフレッチャー・マンソンの妻に扮するのは、ソダーバーグの元妻ベッツィ・ブラントリー。そして娘のエミリーを演じているのも、彼らの娘である。ソダーバーグとブラントリーは1994年に離婚している。ソダーバーグが演じる2人の男は、ソダーバーグ本人が色濃く投影されている。

この『スキゾポリス』にはエンドタイトルがない。たった1コマ(1秒ではなく、本当にフィルムの1コマ分)だけ、権利関係のクレジットが現れる。したがってスタッフとキャストの名前は、映画の中では表示されない。

スティーヴン・ソダーバーグが、監督として巻頭と巻末に登場する。監督が巻頭に登場した映画としては、アルフレッド・ヒッチコックの『間違えられた男』やセシル・B・デミルの『十戒』が有名だが、監督が観客に向かって「この映画を見て混乱が生じても、それは観客の問題」と言い切った作品はこれが初めてである。

この映画は“ゲリラ・プロジェクト”として製作された。ソダーバーグが監督・脚本・撮影をこなし、さらに二役で主演している。作品全体にアヴァンギャルドな雰囲気が横溢し、ブレヒトの演劇的要素やダダイズムまで感じさせる。哲学的でアイロニックなセリフのやり取りは、アナーキーなエネルギーを生んだ。ここまでくると、「友人たちを無料でこき使った」というインターネット上での抗議文まで、ソダーバーグが創作した『スキゾポリス』の世界に含まれているとしか思えない。

1996年/アメリカ/カラー/93分/ヴィスタ/モノラル/原題:『SCHIZOPOLIS』
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INFORMATION

■上映スケジュール

未定


 

 



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LINK

2001年10月20日公開時の劇場

アップリンク・ファクトリー

心斎橋シネマ・ドゥ
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