STORY
罪という字を消して勇気と書く。愛という字を消して君と書く…。
1959年春、イタリア・エミリア州ピアチェンツァ。詩人で劇作家、また蟻の生態研究者でもあるアルド・ブライバンティ(ルイジ・ロ・カーショ)は、芸術サークルを主催し、そこには多くの若者が集っていた。ある日、兄に連れられ、エットレ(レオナルド・マルテーゼ)という医学を学ぶ若者がやってくる。アルドが探していたクロナガアリを持ってきたことで、二人は初めて言葉を交わす。芸術や哲学など、あらゆる話題を語り合い、互いに魅了され、仲を深める二人。エットレはアルドの元に通い詰めるようになるが、エットレの母親は二人の関係に憤り、あろうことか、教会でアルドの母親であるスザンナを罵るのだった。 5年の月日が流れた1964年の春。ローマに出て充実した生活を送っていたアルドとエットレだったが、ある朝、エットレの母親と兄が二人の部屋に突然押しかけ、エットレを連れ去ってしまう。エットレは同性愛の“治療”のために矯正施設に入れられ、アルドは教唆罪に問われ、逮捕されてしまう…。
「我が国に同性愛者はいない
ゆえに法律もない」—ムッソリーニ
1968年夏、イタリア・ローマ。イタリア共産党機関紙「ウニタ」の記者であるエンニオ(エリオ・ジェルマーノ)は、新聞報道でアルドが教唆罪で逮捕されたことを知る。刑法には同性愛という言葉すら載っていないのに、同性愛者のアルドが教唆の罪に問われたことを不審に思い、取材することに。そして、ついにアルドの教唆罪裁判が始まる─。
アルド・ブライバンティ
Aldo Braibanti 1922-2014
イタリアの詩人・劇作家・演出家。第二次世界大戦中はレジスタンスに身を投じ、戦後は芸術活動に専念。教唆罪に問われた“ブライバンティ事件”では、マルコ・ベロッキオ、ピエル・パオロ・パゾリーニら映画監督、ウンベルト・エーコ、アルベルト・モラヴィアら作家がブライバンティの無罪釈放を求め活動した。蟻の生態学者としても知られている。